第2回 うるしから学ぶ、塗料の原点
—自然が生んだ究極の塗料—
前回は、塗料のはじまりが洞窟壁画や古代文明にまでさかのぼることを紹介しました。
今回は、日本独自の塗料文化「漆(うるし)」に注目してみましょう。
漆の歴史はとても古く、縄文時代の遺跡からすでに漆を使った装飾品が見つかっています。
つまり、日本では1万年以上前から、木の樹液を利用して“塗る文化”があったということです。
漆の原料は、ウルシの木から採れる樹液です。
傷をつけると滲み出る乳白色の液体が、空気中の湿気と反応して硬化し、
やがて独特の深いツヤを生み出します。
この“湿気で固まる”という性質は、世界でも珍しい特性であり、
まさに自然が生んだ天然の高性能塗料といえます。
漆が評価される理由は、その耐久性と美しさにあります。
しっかり乾燥すると、金属よりも強い膜をつくり、
水分や酸にも強く、長い年月が経っても光沢を保ちます。
そのため、食器や家具、寺社仏閣の装飾など、
日本の暮らしと文化のあらゆる場面で活躍してきました。
また、漆の美しさを引き出すのは「塗り」と「磨き」の職人技。
何層にも塗り重ね、磨きを繰り返すことで、奥行きのあるツヤが生まれます。
この工程には、塗膜形成・乾燥・研磨といった、
現代の塗装技術にも通じる基本的な考え方が含まれています。
今日の合成樹脂塗料やウレタン塗料なども、
実はこの“漆の原理”を応用したものといわれています。
自然由来の素材から始まった漆の技術が、
現代の化学と融合し、より耐久性・安全性・施工性に優れた塗料へと発展してきたのです。
漆は、単なる「古い塗料」ではありません。
人と自然が向き合い、工夫を重ねてきた“塗装の原点”そのもの。
その精神は、今も現代の塗料づくりに息づいています。
次回は、近代に入り化学の力によって生まれた「油性塗料」と「水性塗料」について、
その違いと進化の過程をたどっていきましょう。
次回予告
第3回 「化学が変えた塗料の世界」
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